研究室紹介
Vol.3
幹細胞リプログラミング研究室
教授 多田 政子
再生医療や創薬の発展に向け
幹細胞リプログラミングの仕組みを解き明かす。
リプログラミングの研究とその応用領域で
哺乳類の受精卵はあらゆる組織細胞に分化できますが、体の組織に分化した細胞が、再び分化特性を持たない幹細胞の状態に戻るプロセスをリプログラミングといいます。ES細胞やiPS細胞で知られるようになったリプログラミング現象は、実は哺乳類の発生過程でも常に起きている現象であり、その制御の仕組みを明らかにすることがテーマの一つです。また、再生医療や新しい薬の開発に貢献するため、ヒトiPS細胞からヒト肝細胞を作製する方法の確立もめざしています。新薬の開発では、マウスなどで実験をしますが、動物では毒性がなくても人間では毒性を示す場合があり、開発を断念するケースも少なくありません。試験用のヒト肝細胞は、海外からの輸入に頼っていますが、国内でヒトiPS細胞からヒト肝細胞をつくって供給できれば、日本人に適したさまざまな薬の候補を試すことができます。
光るiPS細胞によって難病治療の研究が加速
薬の探索には組織として機能している細胞が必要です。そこで私たちは、組織化のプロセスをリアルタイムで、迅速かつ低コストに定量評価できる「光るレポーター遺伝子を入れたiPS細胞」の開発を進めています。組織幹細胞になったとき赤く光り、完全に分化して成人の肝臓の細胞になったときには緑に光るため、その細胞が薬の探索に適した状態になったかどうかはっきりわかります。このレポーター遺伝子を使って、ヒトiPS細胞からつくったヒト肝細胞を成人の組織に近づける技術を完成させることも大きな課題です。

多田 政子 教授
北海道大学大学院博士後期課程後半から英国ケンブリッジ大学ガードン研究所に留学、帰国後、国立遺伝学研究所と京都大学再生医科学研究所にてさきがけ研究21研究員、その後、リサーチアソシエイトや共同研究員として同研究所で研究を継続、鳥取大学染色体工学研究センター教授を経て現職。
[研究内容]
- 幹細胞がもつリプログラミング機構を明らかにする
- ヒトiPS細胞から大人の肝細胞を作り出す
- ヒト成人幹細胞を代替できる肝細胞モデル細胞を作製し創薬開発を支援する
[卒業研究例]
- マウスES細胞を用いたDNAメチル化酵素の特性解析
- 望む細胞に分化すると光るヒトiPS細胞の作製
- 光るヒトiPS細胞を用いた肝細胞分化法の開発