関口 雄一郎 教授
宇宙物理学教室
宇宙の成り立ちを解明するマルチメッセンジャー天文学の始まりに立ち会う幸運。
宇宙の始まりの姿を観測することも可能に
アインシュタインが予言した重力波を、2015年9月、アメリカのLIGOグループが初めて直接観測することに成功しました。これは、私たちが従来宇宙の観測に用いてきた可視光や電波、赤外線、X線、ガンマ線に加え、重力波という新しい「目(観測手段)」を手に入れた歴史的な出来事でした。さらに、2017年8月には中性子星合体からの重力波が検出され、電波からガンマ線まで、あらゆる波長域で観測できたことで、多角的なアプローチで現象にせまるマルチメッセンジャー天文学がスタートするとともに、金やウランなどの鉄より重い元素の起源を知る手がかりも得られました。究極的には宇宙のはじまりからの重力波もとらえられると期待されており、宇宙や重力の謎の解明につながる可能性も秘めています。2019年の稼動をめざしている日本の重力波望遠鏡「KAGRA」のグループには本研究室も参加し、シミュレーション予測した重力波の波形を京都大学と共同で提供していく計画です。
KAGRAチームにシミュレーション予測で貢献
今回受信した信号は、私たちが数値相対論を用いて予測していたものでうまく説明できたことに手応えを感じています。実際に重力波を観測するためには、重力波のシミュレーションデータが不可欠のため、それを担う本研究室の貢献は決して小さくありません。今後、観測数が増えるにつれて、理論との整合性を高め、精緻化を図るチャレンジも始まります。宇宙の構造の成り立ちや進化に関する新しい発見にも数多く立ち会うことができるでしょう。
関口 雄一郎 教授
東京大学教養学部広域科学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。国立天文台理論研究部研究員、京都大学基礎物理学研究所特定研究員を経て2015年東邦大学理学部物理学科へ。2023年4月より現職。
[研究内容]
- ブラックホールの形成メカニズムの研究
- 重力波放出現象の研究
- 数値相対論に関する研究