有効成分の効果を発揮させる工夫が「製剤」
病気の治療に使われる「くすり」は、有効成分が入っていれば良いわけではありません。例えば、有効成分がとても溶けにくい性質のものであれば、飲んでも体に吸収されず、効果が現れません。ですから、薬をつくる際には有効成分が最も効果を発揮するように、ほかの物質と組み合わせたり、特殊な製造方法でつくったりという工夫をしています。逆に、有効成分が急に溶けると副作用が大きくなる傾向があるため、有効成分を別の物質でコーティングして、時間をかけて溶けるようにする場合もあります。こうした工夫のことを「製剤化」と呼び、製剤を研究することで、もっと良い医薬品をつくることができるのです。薬の構造と機能は深く関係しているため、私たちの研究室では、放射光X線や核磁気共鳴画像法など、最先端の科学技術を駆使して、製剤の構造や含まれている有効成分・添加剤の物性を原子レベルで解き明かそうとしています。
飲みやすく、副作用の少ない薬の開発に貢献する
製剤は、人が薬を飲むときに最初に触れる部分をつくる、とても身近な研究分野でありながら、有効成分を狙い通りに効かせるための工夫には可能性がたくさんあります。溶けにくい、湿度に弱い、光で分解してしまうなどの成分の扱いにくさを克服すること。あるいは副作用の少ない薬や錠剤を小型化したり、薬の量を減らしたりすること。製剤は、患者さんが薬を飲む際の負担を軽減することにもつながる、やりがいの大きな分野だと言えるでしょう。